作家エッセイ
四季折々
メディアワークス文庫の作家が「季節」をテーマに綴るエッセイ。
今月は2017年1月より連続ドラマがスタートする大人気シリーズ
『探偵・日暮旅人』シリーズの著者・山口幸三郎先生がお贈りします。 ※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第30回 「怖くておいしい夏野菜」仲町六絵

 夏野菜の季節です。トマトやナスやズッキーニ、どれもおいしいですが、夏野菜には料理以外にも大事な役割があります。  きゅうりとナスに四本の足をつけた、お盆のお供えです。どちらも、あの世から帰ってくる魂の乗り物だと言われています。 きゅうりは馬で、死者の魂を乗せて急いでこの世にやってくる。ナスは牛で、ゆっくり名残を惜しみながらあの世へ去っていく。
 しかし泉鏡花の小説『草迷宮』には、何やら不気味なナスが出てきます。小さなナスの漬物なのですが、主人公の青年が食べようとするとグ、グ、と鳴いて動くのです。そこで青年は何と「皿から飛び出さないうちに」とナスを食べてしまいます。「ナスが鳴くわけはない、聞いている自分の耳が鳴るんでしょう」と哲学めいた解釈つきで。結局青年は無事だったのですが、一体何が取り憑いたナスだったのか、想像するとちょっと怖くなります。

*著者プロフィール*
2010年『典医の女房』で、短編ながら第17回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉を受賞。本作の他のシリーズに『からくさ図書館来客簿』がある。

*仲町六絵の作品*
・典医の女房・狭霧に隠された秘密とは? 戦国の世を舞台に紡がれる幽玄怪異譚。
『霧こそ闇の』

・幕末――激動の時代に、新時代の先駆けとなって散った志士たちがいた。
『夜明けを知らずに ―天誅組余話―』

・古都・京都に佇む小さな私立図書館。そこには、不思議な力を秘めた館長さんがいた――。
『からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたち~』

・古都・京都に佇む小さな私立図書館。不思議な力を秘める館長さんたちの、新たな試練とは――。
『からくさ図書館来客簿 第二集 ~冥官・小野篁と陽春の道なしたち~』

・古都・京都に佇む私立図書館。不思議な力を秘めた館長さんをそこから連れ出す、昔語りとは――
『からくさ図書館来客簿 第三集 ~冥官・小野篁と短夜の昔語り~』

・古都・京都に佇む私立図書館。不思議な力を秘めた館長さんに託された、ある使命とは――
『からくさ図書館来客簿 第四集 ~冥官・小野篁と夏のからくり~』

・古都・京都に佇む私立図書館。不思議な力を秘めた館長さんが目にする、新たな兆しとは――。
『からくさ図書館来客簿 第五集 ~冥官・小野篁と剣鳴る秋~』

・『からくさ図書館来客簿』の仲町六絵が描く、あやかしたちと遊ぶ、ジャパネスク・ファンタジー。
『南都あやかし帖 ~君よ知るや、ファールスの地~』