作家エッセイ
四季折々
メディアワークス文庫の作家が「季節」をテーマに綴るエッセイ。
今月は2017年1月より連続ドラマがスタートする大人気シリーズ
『探偵・日暮旅人』シリーズの著者・山口幸三郎先生がお贈りします。 ※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第1回 「あの冬」三上 延

 専業作家になったのは冬のことでした。
 デビューしてからも続けていた古書店のアルバイトを急に辞めてしまったのです。確実な見込みがあったわけではありません。二つの仕事をこなす体力がなかっただけです。
 その冬はあまり人と会いませんでした。
 夕方目を覚まして、冷え切ったドアノブを回して外へ出ると、坂の下から木枯らしが吹いてきます。コンビニからの帰り、アパートの近くにある人気のない川を長い時間眺めていました。自分の選択は正しかったのか、これから本当に大丈夫なのか、毎日仕事を始める前にそこで自問するのが常でした。
 その答えが降ってきたのは、年が明けて寒さがピークに達した頃でした。
 誰かに大丈夫だと言ってもらえるはずがない。何も大丈夫ではないのだから。自分の温もりは自分で守らなければならない。歯が鳴るのは食いしばって止めるしかない。部屋に戻って仕事を続ける以外、今の俺にできることは何もないのだ。
 毎年この季節になるとその冬のことを思い出します。冬は好きな季節です。

*著者プロフィール*
古書にまつわる謎を解いていく、ビブリオミステリ『ビブリア古書堂の事件手帖』がベストセラーとなる。ホラーからファンタジーまで、幅広い作風で縦横に活躍中。

*三上 延の作品*
・その美しい女性は優れた古書の知識で、謎と秘密を解き明かす。
『ビブリア古書堂の事件手帖
~栞子さんと奇妙な客人たち~


・話題のベストセラー、待望の続編。
『ビブリア古書堂の事件手帖2
~栞子さんと謎めく日常~


・ミリオンセラー達成の大人気ビブリオミステリ、待望の最新巻!
『ビブリア古書堂の事件手帖3
~栞子さんと消えない絆~


・日本で一番愛された文庫ミステリ、待望の最新刊。
『ビブリア古書堂の事件手帖4
~栞子さんと二つの顔~


・驚異のミリオンセラー。日本で一番愛される文庫ミステリ、待望の最新刊。
『ビブリア古書堂の事件手帖5
~栞子さんと繋がりの時~