作家エッセイ 四季折々

作家エッセイ
四季折々

※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第12回 「冬に降る」 甲田学人

 子供の頃、私は牡丹雪を、小さな「針」が集まったものだと思っていた。
 孤立気味の子供だった私は、物をよく眺めていた。孤立していたからぼんやり物など眺める暇があったのか、ぼんやりした子供だから孤立したのかは、知らない。ともかく、皆が綿のようだと言う牡丹雪は、私の観察する限り、もっと結晶質の物に見えていた。
 掴めばふわと潰れるのではなく、しゃりと砕ける。頬に触れればちくりと冷気が刺す。微細な氷の針が、磁石に集まる砂鉄よりも柔らかに組み合って、大粒の牡丹となって、空から舞い降りて来ている。
 私は牡丹雪が好きだった。腕を広げて全身に牡丹雪を浴び、空に口を開けて牡丹雪を呑んだ。
 私は孤立気味の子供だった。からかいを受け、悪し様に言われた。死にたかった。
 腕を広げて全身に牡丹雪を浴び、空に口を開けて牡丹雪を呑んだ。
 子供の頃、私は牡丹雪を、小さな「針」が集まったものだと思っていた。

著者プロフィール

1977年、岡山生まれ。津山三十人殺しの舞台となった津山市出身。二松学舎大学卒。民俗学および魔術に関して豊富な知識を持ち、『Missing 神隠しの物語』(電撃文庫)でデビュー。

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