作家エッセイ
四季折々
メディアワークス文庫の作家が「季節」をテーマに綴るエッセイ。
今月は2017年1月より連続ドラマがスタートする大人気シリーズ
『探偵・日暮旅人』シリーズの著者・山口幸三郎先生がお贈りします。 ※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第12回 「冬に降る」甲田学人

 子供の頃、私は牡丹雪を、小さな「針」が集まったものだと思っていた。
 孤立気味の子供だった私は、物をよく眺めていた。孤立していたからぼんやり物など眺める暇があったのか、ぼんやりした子供だから孤立したのかは、知らない。ともかく、皆が綿のようだと言う牡丹雪は、私の観察する限り、もっと結晶質の物に見えていた。
 掴めばふわと潰れるのではなく、しゃりと砕ける。頬に触れればちくりと冷気が刺す。微細な氷の針が、磁石に集まる砂鉄よりも柔らかに組み合って、大粒の牡丹となって、空から舞い降りて来ている。
 私は牡丹雪が好きだった。腕を広げて全身に牡丹雪を浴び、空に口を開けて牡丹雪を呑んだ。
 私は孤立気味の子供だった。からかいを受け、悪し様に言われた。死にたかった。
 腕を広げて全身に牡丹雪を浴び、空に口を開けて牡丹雪を呑んだ。
 子供の頃、私は牡丹雪を、小さな「針」が集まったものだと思っていた。

*著者プロフィール*
1977年、岡山生まれ。津山三十人殺しの舞台となった津山市出身。二松学舎大学卒。民俗学および魔術に関して豊富な知識を持ち、『Missing 神隠しの物語』(電撃文庫)でデビュー。

*甲田学人の作品*
・この桜、見えるの?……幽霊なのに」鬼才が放つ渾身の幻想怪奇譚──。
『夜魔 -怪-』

・──少女達にとって生きることは『痛み』だ。現代社会に蘇る恐怖の童話ファンタジー。
『時槻風乃と黒い童話の夜』

・──少女達にとって生きることは『痛み』だ。現代社会に蘇る恐怖の童話ファンタジー第2幕。
『時槻風乃と黒い童話の夜 第2集 』

・少女達の秘密の王国。そこに眠るのは──。現代社会に蘇る恐怖の童話ファンタジー第3幕。
『時槻風乃と黒い童話の夜 第3集』