作家エッセイ 四季折々

作家エッセイ
四季折々

※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第16回 「好きです、春。」 成田名璃子

 昔々のこと。まだ十代だった私は、ちょっと斜に構えためんどくさい若造でした。映画は単館、純文やカルトなコミック本をバッグに忍ばせ、顔が大きい癖にジーン・セバーグに憧れてベリーショートにし、アルバイトはおしゃれ映画館の受付。自分の価値観に自信がなくて、うっかり格好悪いことをやらかしてしまわないか、いつもビクビクしていました。  
 当時、良くいっしょに遊ぶおっとりとした友達がいました。散々優しくしてもらっていたくせに、私は彼女のことを、ちょっとダサいなと思っていました。あるうららかな春の日、「私、春が大好き」と素直に、のびのびと笑う彼女が少し妬ましくて、私は「春って鬱になるから嫌い」と答えました。めんどくさ、十代の私(笑)。彼女とはもう連絡を取っていないけど、今なら言いたいなあ。本当は、私も春が大好きだったよ。あの頃、いつも一緒にいてくれてありがとう。また一緒に、桜並木を歩きたいねえ。

著者プロフィール

青森県生まれ、東京都在住。魚座、A型。趣味は星占いと散歩。昔は東京に憧れていたが、今は田舎に憧れを持っている。会社員を辞め、現在はフリーのコピーライターも兼業。

成田名璃子の作品

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