作家エッセイ
四季折々
メディアワークス文庫の作家が「季節」をテーマに綴るエッセイ。
今月は2017年1月より連続ドラマがスタートする大人気シリーズ
『探偵・日暮旅人』シリーズの著者・山口幸三郎先生がお贈りします。 ※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第18回 「夏の空には友達がいる」範乃秋晴

 時折、空を指して、あなたの友達がいる、と彼女が笑います。きっかけは、ある夏の出来事でした。京都に住み始めた私たちは、盆地特有の暑さにやられ、休日は決まって避暑に行くようになりました。鞍馬山や貴船の辺りが涼しいのですが、近場ですませようとなると、鴨川デルタが最適です。京阪電鉄、出町柳駅を降りたすぐのところにある三角州で、夏になると多くの人が川に入り涼をとっています。川を渡るための飛び石があり、そこを通るだけでも涼しげな気分を味わうことができるのです。
 出町柳駅の近くに美味しいおにぎり屋さんがあるのですが、そこでお昼ご飯を買い、河川敷でせせらぎを感じながらおにぎりを頬ばるのが、私たちの楽しみです。
 その日は河川敷の階段に座って、お昼をとることにしました。彼女との会話に夢中になり、食べかけのおにぎりを左手に持ったままいると、ふいに背後から黒い影が現れました。それは食べかけのおにぎりを一瞬で奪い、空高く飛び去っていったのです。トンビでした。落ち込む私に、友達にあげたんだよね、と彼女は笑い、自分の分のおにぎりをわけてくれました。

*著者プロフィール*
福井県出身。小学校入学までを石川県金沢市で過ごす。東京に出て作家デビュー後、とある事情から京都に移り住む。古都の暮らしを満喫していたが、また別の事情によって、今度は長野県へ。田舎暮らしを楽しんでいる。

*範乃秋晴の作品*
・狂気のクレーマーに対処するプロフェッショナル。彼の武器は──言葉のみ。
『マリシャスクレーム ―MALICIOUS CLAIM―

・凶悪なクレーマーVSクレーム処理の天才、息苦しいほどの対決が再び!!
『マリシャスクレーム2 ―MALICIOUS CLAIM―

・アフタヌーンティーは恋のお菓子とともに
『鴨川貴族邸宅の茶飯事 ~恋する乙女、先斗町通二条上ル~

・第1巻、重版出来! お嬢様との恋にたわむれる華麗なる執事たちの秘密とは?
『鴨川貴族邸宅の茶飯事2 恋の花文、先斗町通二条送ル

・大人気お嬢様と執事の恋の狂想曲、第3弾!
『鴨川貴族邸宅の茶飯事3 亡き花嫁に捧ぐ、送り火の誓い

・華麗なる執事とお嬢様の恋の狂想曲、ついに完結!
『鴨川貴族邸宅の茶飯事4 初恋の君へ告ぐ、変わらない二人の想い

・近頃、祇園を賑わす花みっつ。舞妓に怪盗、そして事件?
『舞妓さんと怪盗大旦那』

・祇園の怪盗が舞妓さんと世直しをする? 花街の華麗な日常とともにどうぞ。
『桜かんざしの舞妓さんと怪盗大旦那』