作家エッセイ
四季折々
メディアワークス文庫の作家が「季節」をテーマに綴るエッセイ。
今月は2017年1月より連続ドラマがスタートする大人気シリーズ
『探偵・日暮旅人』シリーズの著者・山口幸三郎先生がお贈りします。 ※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第19回 「毒魚の夏」五十嵐雄策

 釣りが趣味なのですが、二年くらい前の夏に、友人と三人で神奈川県の城ヶ島というところに一泊二日で夜釣りに行きました。
 釣れた魚をその場で食べようというコンセプトで、途中でコンビニなどで食料を調達することもなく、期待に胸を膨らませて現地へと向かったのです。
 ……はい、この時点で何となく察していただけると思うのですが、三人で夕方の四時から夜中の十一時過ぎくらいまで粘って、
 釣れたまともに食べられる魚はSサイズの鯖が一匹。あとはゴンズイというナマズを小さくしたような毒魚ばかりという有様でした。
 空腹と疲労の中、言い出したのはだれだったか。「ゴンズイを食べよう」。毒があるのはヒレだけなので、そこを取り除けば食べられるのです。
 その時食べたゴンズイの味は、空腹とも相まって、これ以上のものはないというくらいの美味しさでした。……すみません、鯖の方が十倍くらい美味しかったです。

 夏が来ると、あの少し磯臭いゴンズイの味を思い出します。

*著者プロフィール*
第4回電撃hp短編小説賞最優秀賞を受賞し、『乃木坂春香の秘密』でデビュー、全16巻の同作は二度のTVアニメ化を果たす大ヒット作となる。他著作に『小春原日和の育成日記』ほか多数。

*五十嵐雄策の作品*
・輝いていた少年の日々にもう一度戻れたら――。これは、仲間たちとなつやすみを取り戻す物語。
『ぼくたちのなつやすみ 過去と未来と、約束の秘密基地