作家エッセイ 四季折々

作家エッセイ
四季折々

※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第24回 「ささやかな冬の遭難」 マサト真希

 取材に行くとほぼ遭難します。
 遭難は誇張だった、正確には迷子です。
 しかし見知らぬ土地での迷子は遭難に等しい。うら寂しく人気のない山中とか林の中とか城跡とか、まるで地図のないオリエンテーリング。独り林間学校……。
 もちろん新刊の取材先でも迷子になりました。
 冬の岩手、花巻城址の空堀の底です。
 なんでそんな場所に、という経緯は文字数が足りないので簡単に書くと単に迷った。
 周囲は雪の積もる枯れ草の土手。他に道はない。仕方なしに枯れ草をつかんで上り、何度も滑って荷物をぶちまけ、ほうほうの体で這い上りました。
 上った先は小学校の前でした。いきなり出現した雪まみれの人影なんていたいけな児童たちにとっては通報案件ですが、幸い休日。助かったあー!
 ……という今年の冬の思い出。そんな行き当たりばったりの旅と人生も悪くない。ただし無事に帰宅できたら、という結果ありきで。

著者プロフィール

静岡県出身。六月生まれ。『スカイワード』(電撃文庫)でデビュー。旅とおいしいご飯と読書と映画と睡眠が生き甲斐。行き当たりばったり体当たりの取材旅行ばかりしています。

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