作家エッセイ 四季折々

作家エッセイ
四季折々

※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第26回 「冬、それは眠りの季節」 角埜杞真

 冬は嫌い。寒いし、なんだか暗いから。
 そんな言葉を時おり耳にしますが、わたしは冬が結構好きです。骨に沁みる冷たさも、とろりと暗く長い夜も、心地よい眠りを与えてくれるもの。ぬくぬくと暖かい布団に包まれる幸せは、いつの季節よりも、断然、冬です。
 森の小さな洞穴で、ただひたすらに眠って冬を過ごせるのは獣たちの特権ですが。わたしたちは長い眠りの代わりに、いくつもの〝贈り物〟を楽しめる季節でもありますね。子どもたちにはサンタクロースやお年玉、恋する男女にはチョコレート。アンド、3月の倍返し。
 賑やかなイベントに浮き足立って、けれども、しんとした静寂が似合うのもまた、この季節ならでは。ひやりと乾いた空気に、いつもより遠くの音が耳に届く夜。そんな夜には不思議と、大切なひとと夢で逢えたり。
 冬。それは、やがて訪れるはずの春を待つ、静かな眠りの季節です。願わくば、いつの日にかこの世に『冬眠制度』の確立されんことを。

著者プロフィール

第22回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞し、デビュー。東京生まれ東京育ち、心のふるさとは岐阜県関市。昔、深夜の新青梅街道で引ったくりにあい、パトカーに乗って連行されたのが唯一の自慢。

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