作家エッセイ 四季折々

作家エッセイ
四季折々

※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第30回 「怖くておいしい夏野菜」 仲町六絵

 夏野菜の季節です。トマトやナスやズッキーニ、どれもおいしいですが、夏野菜には料理以外にも大事な役割があります。  きゅうりとナスに四本の足をつけた、お盆のお供えです。どちらも、あの世から帰ってくる魂の乗り物だと言われています。 きゅうりは馬で、死者の魂を乗せて急いでこの世にやってくる。ナスは牛で、ゆっくり名残を惜しみながらあの世へ去っていく。
 しかし泉鏡花の小説『草迷宮』には、何やら不気味なナスが出てきます。小さなナスの漬物なのですが、主人公の青年が食べようとするとグ、グ、と鳴いて動くのです。そこで青年は何と「皿から飛び出さないうちに」とナスを食べてしまいます。「ナスが鳴くわけはない、聞いている自分の耳が鳴るんでしょう」と哲学めいた解釈つきで。結局青年は無事だったのですが、一体何が取り憑いたナスだったのか、想像するとちょっと怖くなります。

著者プロフィール

2010年『典医の女房』で、短編ながら第17回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉を受賞。本作の他のシリーズに『からくさ図書館来客簿』がある。

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