作家エッセイ 四季折々

作家エッセイ
四季折々

※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第31回 「真夏に降る雪」 綾崎 隼

2010年の夏。私は『吐息雪色』という小説を『雪』の季節に発売するため、汗だくになりながらパソコンに向かっていました。
「優しい雪が降り積もる夜だけは、大好きな人が何処へ向かったのかを知ることが出来る」などとキーボードを叩いていましたが、現実は猛暑です。肉体と精神の矛盾に、次第に頭がおかしくなっていきます。
今は真夏なのか、真冬なのか。私は蝶なのか、虎なのか。ミクロにおいて冬と夏が同時に成立するのであれば、マクロにおいても冬で良いのではないだろうか。甲子園の決勝戦9回2死で、アナウンサーが「日本文理の夏はまだ終わらない!」と叫んでいたけれど、むしろ冬もまだ終わってはいないのではないだろうか。
 そして、2016年。悲劇は繰り返されます。
新刊『風歌封想』は真夏の同窓会から始まる物語なのに、真冬に執筆することになったのです。しかし、私は革命的な解決策を思いつきました。発想を逆転させれば良いのです。
ここは南半球。あれは南十字星。私はアボリジニ。そう自分に言い聞かせながら書けば、季節は逆転します。この画期的な発明が多くの作家の精神を救うよう願い、ここに記します。

著者プロフィール

1981年生まれ。新潟市出身。2009年、第16回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>受賞作の『蒼空時雨』でデビュー。

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