作家エッセイ 四季折々

作家エッセイ
四季折々

※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第33回 「秋上がり」 つるみ犬丸

 日本酒には『秋上がり』、『秋晴れ』と呼ばれ、長い間、愛好者の舌を堪能させているものがございます。
 冬に製造した酒を夏の間貯蔵し、秋を迎え向上した酒質を表現した言葉で、新酒と比較しますと一般的に香味が丸みを帯び、落ち着いた仕上がりになるようです。
 寝かせたことにより熟成を得たからなのですが、しかし寝ていて美味しくなるなんてこれがまた羨ましい話で。
 それなら私も、一つ夏の間にぐうたらして自ら熟成してやろうかなどと思う訳ですが、しかし冷静に結果を想像すると恐ろしく、なかなか実行に移せません。
 ちなみに『秋上がり』の対義語として『秋落ち』があり、それは読んで字の如く一夏越して味が落ちてしまったものを指します。
 まあ僕の場合はこっちになるだろうなと思いつつ、今日も程々に頑張って程々にお酒を嗜む、程々に平和な一日を過ごすのでした。

著者プロフィール

大阪府在住。『駅伝激走宇宙人』『ハイカラ工房来客簿』シリーズを執筆。暑い季節は燗酒を好んで飲む。夏場は体重が落ちるが、この本の取材のお陰で今年は残念ながら大丈夫。

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