作家エッセイ 四季折々

作家エッセイ
四季折々

※メディアワークス文庫に挟まれている刊行情報チラシ「HeadLine」にも同じエッセイが載っています。
第6回 「夏と物語のはじまり」 近江泉美

 不思議なことに、私の書く物語はやたらと6、7月から始まります。デビュー前も、デビュー作までそうでした。今の季節、好きじゃないのに。
 子どもの頃は今が一番もどかしい季節でした。梅雨のただ中、期末テスト、それが終わればようやく夏休みです。時間の経過はカタツムリみたいにゆっくりで、まだかまだかと夏を待っていました。
大人になると手強い季節に変わりました。洗濯物が乾かない、カビや食中毒の心配、そして名前を呼んではいけないイニシャルGの虫が活動を始める……恐ろしい季節です。暑いし、じめじめしてるし、もう良いことなし。
 けれど、ふと晴れた日。青空に入道雲が立つのを見つけると、どんなに仕事が忙しくてもわくわくします。何か始まるような、楽しいことが待っているような、そんな予感。
どうやら、義務教育と一緒に夏休みを心待ちにする感覚をすり込まれたようです。
 夏休みはもうないけれど、このわくわくは私の物語に続いています。
 もうすぐ夏ですね。

著者プロフィール

東京都出身、在住。2012年『小悪魔ちゃんとMP0の少年』(電撃文庫)でデビュー。コーヒーはブラック派、紅茶は何でも好き。本作は『オーダーは探偵に』シリーズ第4弾。

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