作家エッセイ 私のお気に入り

作家エッセイ
私のお気に入り

メディアワークス文庫の作家陣に「私のお気に入り」をテーマに語ってもらうエッセイ。
知られざる素顔が垣間見えるかも……?今月は第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作
『君は月夜に光り輝く』の著者・佐野徹夜先生がお贈りします。

第2回 「夜が明ける前」 佐野徹夜

 夜と朝のあいだにある、あの透き通ったような時間が好きです。  眠れなくて、つい夜更かしをしてしまう。人生について考えたり、本を読んだりして、結局そのまま朝まで起きている。そんな夜を何度も過ごしてきた気がします。人に会ったり、どこかに行ったりすることだけが、人生経験じゃない。その一人の孤独な夜が、僕にとっては一番大切でした。  ふと窓際に目をやると、カーテンの隙間からうっすら光が漏れている。窓を開けると、外の空が白くなりだしている。でもまだ薄暗い。もう少ししたら朝になって、新聞配達のバイクが道を通りがかる。歯を磨いて顔を洗って、学校に、会社に、どこかに行かなきゃいけない。でも、それまでの少しの間、自由でいられる。白い頭、澄んだ空気。夜から朝になるまでの少しの猶予。何者でもない自分でいられるその時間が、僕のお気に入りです。

著者プロフィール

『君は月夜に光り輝く』で第23回電撃小説大賞《大賞》受賞、デビュー。晴れて専業小説家になった今の悩みは「趣味は読書」と言えなくなったこと。ペンネームの由来は、よく徹夜していることから。

佐野徹夜の作品

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