作家エッセイ 私のお気に入り

作家エッセイ
私のお気に入り

メディアワークス文庫の作家陣に「私のお気に入り」をテーマに語ってもらうエッセイ。知られざる素顔が垣間見えるかも……? 今月は第23回電撃小説大賞《銀賞》受賞作『明治あやかし新聞』の著者・さとみ桜先生がお贈りします。

第9回 「ざわざわ、ざわわ……」 さとみ桜

 朝目が覚めて、家族の誰かが起きている気配。遠くから風に乗って聞こえてくる子供の声。公園の木が風に吹かれる音。小鳥のさえずり。降り始めの雨。ざわざわ、ざわわ……。
 嫌なことも仕事のことも、これからの生活のことも、何もかも「今日も平和だから、まあいっかぁ」と思わせてくれる、そんなざわめきが好きです。音が大きすぎればうるさいけれど、小さすぎても駄目。音量がちょうどよくても、嵐の前に吹く風のような不安をあおられる音は駄目。──などと考えた結果、冒頭のような音が私には心地よいという答えに至りました。そんな音を聞きながら、「平和だなぁ」と思いつつ惰眠をむさぼる昼下がりほど幸せなものはありません。幸せをかみしめすぎて、一日のほとんどを睡眠に費やしてしまうくらいです。
 さて、原稿を進めなくては。……いや、今日もいい天気だ。小鳥の声が聞こえてくるよ。眠くなってきたから眠ろうか。え? 原稿? 何それ?
 今日も平和です。

著者プロフィール

生まれも育ちも学校も勤め先も岐阜県某市の引きこもり系。ヒゲ、筋肉、オッサンが好き。趣味は睡眠。特技は迷子。最近は人生にも迷っているらしい。

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