逢う日、花咲く。 逢う日、花咲く。
君に逢いたい。いつか、逢いたい。 でも僕には、その「いつか」は、永遠に訪れない。 君に逢いたい。いつか、逢いたい。 でも僕には、その「いつか」は、永遠に訪れない。

かつてこれほどまでに残酷で、
これほどまでに透明な初恋が存在しただろうか?

かつてこれほどまでに残酷で、
これほどまでに透明な初恋が
存在しただろうか?

第25回電撃小説大賞応募作4,843作品の中で
選考委員の心にもっとも深い爪痕を残した青春恋愛小説。

第25回電撃小説大賞応募作4,843作品の中で
選考委員の心にもっとも深い爪痕を残した
青春恋愛小説。

Story

13歳で心臓移植を受けた僕は、それ以降、自分が女の子になる夢を見るようになった。
きっとこれは、ドナーになった人物の記憶なのだと思う。

明るく快活で幸せそうな彼女に僕は、瞬く間に恋をした。
それは、決して報われることのない恋心。僕と彼女は、決して出逢うことはない。
言葉を交すことも、触れ合うことも、叶わない。それでも ――
僕は彼女と逢いたい。
僕は彼女と言葉を交したい。
僕は彼女と触れ合いたい。

僕は……彼女を救いたい。

13歳で心臓移植を受けた僕は、それ以降、
自分が女の子になる夢を見るようになった。
きっとこれは、
ドナーになった人物の記憶なのだと思う。

明るく快活で幸せそうな彼女に僕は、
瞬く間に恋をした。
それは、決して報われることのない恋心。
僕と彼女は、決して出逢うことはない。
言葉を交すことも、触れ合うことも、
叶わない。それでも ――
僕は彼女と逢いたい。
僕は彼女と言葉を交したい。
僕は彼女と触れ合いたい。

僕は……彼女を救いたい。

これは、僕が君に出逢い恋をしてから、
君が僕に出逢うまでの、奇跡の物語。

これは、僕が君に出逢い
恋をしてから、
君が僕に出逢うまでの、
奇跡の物語。

Character

八月朔日 行兎(ほずみ いくと)13歳の時に心臓の移植手術を受け、その直後から自分が見知らぬ女の子として暮らす夢を見るようになった。現在は高校1年生。親元から離れて現実味のない日々を送る中、次第に夢に見る女の子に惹かれ、恋をする。鈴城 葵花(すずしろ あいか)ホズミの夢に登場する女の子。毎日を楽しく生きるごく普通の高校生だが、現実には既に故人であり、その心臓はホズミに移植された。その記憶はホズミに受け継がれ、彼は葵花自身の人生を追体験することとなる。
  • 八月朔日 行兎(ほずみ いくと)

    八月朔日ほずみ いくと

    13歳の時に心臓の移植手術を受け、その直後から自分が見知らぬ女の子として暮らす夢を見るようになった。現在は高校1年生。親元から離れて現実味のない日々を送る中、次第に夢に見る女の子に惹かれ、恋をする。

  • 鈴城すずしろ あいか

    ホズミの夢に登場する女の子。毎日を楽しく生きるごく普通の高校生だが、現実には既に故人であり、その心臓はホズミに移植された。その記憶はホズミに受け継がれ、彼は葵花自身の人生を追体験することとなる。

    鈴城 葵花(すずしろ あいか)

keyword

【記憶転移】き-おく-てん-い 臓器移植手術を受けた際、臓器提供者(ドナー)の記憶の一部が受け継がれる現象。臓器の提供を受けた患者(レシピエント)は夢としてドナーの記憶を追体験したり、自覚のないまま本来知りえない知識を得たりする。記憶のほかに、趣味嗜好を受け継ぐ場合もある。 【記憶転移】き-おく-てん-い 臓器移植手術を受けた際、臓器提供者(ドナー)の記憶の一部が受け継がれる現象。臓器の提供を受けた患者(レシピエント)は夢としてドナーの記憶を追体験したり、自覚のないまま本来知りえない知識を得たりする。記憶のほかに、趣味嗜好を受け継ぐ場合もある。

1980年代。
 アメリカでとある女性が心臓の移植手術を受けた後、苦手だった食べ物が好物になったり、内向的だった性格が活動的になるなど、趣向や性格に変化が見られるようになりました。
 後に彼女は自分の命を救ってくれたドナーの身元を突き止め、その相手がとても活動的な性格だったこと、手術後から彼女が好むようになったピーマンやフライドチキンが大好物だったことを知って驚いたといいます。

「記憶転移」は、現実に報告例がある現象です。
 科学的な根拠は認められていないものの、先に紹介したアメリカの例では、ドナーの遺族は彼女の中で大切な人が生き続けていると、確かに感じることができたそうです。

 あるいは、それは命が尽きても誰かの助けになりたいと願う、勇気と優しさにあふれた想いがひき起こした、ちょっとした奇跡なのかもしれません。

 本作は、そんな「記憶転移」をモチーフにした、とても切なく、少し不思議な恋愛青春小説です。
 自分を救ってくれたドナーの女の子を夢で見て、その子に想いを寄せてしまう…。
 でも、その子はもう亡くなっていて――そんな、叶うはずのない恋をしてしまった男の子のお話です。

 不毛で、報われなくて、馬鹿げていて救いようのない無意味な恋。
 本当なら悲劇にすらならない、始まることすらなく終わるはずだった恋。

 でも――

 ドナーの強い想いが「記憶転移」という奇跡をひき起こすのなら……
 彼の想いもまた、何かしらの奇跡をもたらすことも、あるのかもしれませんね?

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