実写映画化&DVD発売も決定し、ファンから熱い支持を集める『生贄のジレンマ』。その著者・土橋真二郎に作品の魅力を語ってもらう特別インタビューをお贈りします。本作が出来上がった経緯や担当編集とのやり取りまで、衝撃の問題作の舞台裏をうかがいました。

『生贄のジレンマ』著者、土橋真二郎先生へのインタビュー
──まず始めに『生贄のジレンマ』という作品についての簡単な説明をお願いします。
土橋真二郎(以下:土橋)  その他全員を助けるために、自らを犠牲にできますか、というストーリーです。
 学校に隔離された高校三年生たちがデスゲームを行います。ポイントは、自分の命を救うために自分では何もできないということです。自分の運命は他人の行動に委ねる必要があり、他人の命を救うには自分を犠牲にしなければならない、というジレンマに陥ります。
――この作品が創られることになった経緯などを伺ってよろしいでしょうか?
土橋  生贄のジレンマは投稿時代初期に作った作品のアイデアを元にしています。なので、あまり自分の作品という気がせず、映像化されたのは少しだけ複雑な気分です。この作品が受け入れられたのは、投稿時代序盤ならではの荒削りなアイデアと、作家になってからの自分の他人行儀な改編、修正がよかったのかもしれません。
 ストーリーの動きを潤滑にするため、放送委員長の水島涼子というキャラを後から付け足したのですが、勝手に作品をいじってしまった罪悪感があったりします。
――物語の核となる“ゲーム”などのアイディアは、どのような物から着想を得られたのでしょう?
土橋  システムはゲーム理論の囚人のジレンマをモチーフにしています。フェアなルールの中で殺し合いをさせるために採用したのだと思います。
 あと、作中にインパクトのある大きなものを入れたかったので、生贄の穴というシステムができました。投稿時代のことですが、住んでいた街が再開発され重機で深い穴を掘っていたんですね。その頃暇だった僕はなんとなく毎日駅前に出かけ、校庭にでっかい穴が空いてたら面白いだろうなって、缶コーヒーを飲みながら工事を眺めてました。
 あの頃って一日中だらだらしていても、なにかしらインプットされていたんだなあ、とつくづく思います。
――担当編集さんから特に指摘された部分などはありますか?
土橋  一番意見が分かれたのは、電撃文庫で出すかメディアワークス文庫で出すか、ということですかね。僕はプロット段階で若い年齢向きかなあと思っていたので、メディアワークス文庫で出すにあたって駆け引き要素を強くするなど改編しました。
――現在、新たな『ジレンマ』シリーズ『人質のジレンマ』を刊行中の土橋真二郎先生ですが、最新作の見所についてお聞かせください。
土橋  作中において人質ゲームという、自らを人質に交渉を行うというシステムがあります。そんなゲームが隔離された学校全体に広がります。
 人質は人質であって犯人であり、その他の人間は交渉相手です。与えられたその役柄が高校生の人間関係を変化させていく、というストーリーになります。
 ちなみに上下巻での刊行予定です。